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(1995)の調査では、漁業、都市の婦人は農村に比べ高かったが、第4次循環器疾患基礎調査(1993a)によれば、血圧値、血液所見、肥満度などが、過去には大きかった地域差が次第に縮小していることが指摘されており、本研究での結果もこれを支持するものであった。
5.血液検査値等への生活習慣の影響
本間(1986)が指摘しているように、多くの肥満は過食から起こる。従来、肥満に関しては、栄養と身体活動量という点に重点がおかれてきた。本研究の結果から、農漁村と都市という環境要因に関わる地域差が肥満度に最大の影響を持ち、さらに高塩分摂取、不規則な食事の摂取なども影響を与えていることが示唆された。このことから、健康教育を行うときは、あらかじめ地域差への配慮が必要なこと、肥満に対しては、適正熱量の摂取の指導のみでなく、食行動からのアプローチも重要なことが指摘される。
血圧は加齢とともに高くなるといわれるが、本調査においては収縮期血圧と年齢、不規則な食事との相関が有意であった。収縮期血圧はBMIとの相関もあることから、不規則な食事が過食を生じ、肥満が収縮期血圧の上昇を生じる可能性が推測される。また、健康で遺伝で決まるとする考え方を示す遺伝的健康観と、BMI、収縮期および拡張期血圧値とが有意な正相関であった。これは、循環器疾患の予防という観点からみると重要である。すなわち、循環器疾患予防のためには、疾病が生活習慣の改善等で予防可能であるという意識をもたせる健康教育の有効性を強く示唆するものである。
飲酒、喫煙の習慣の少ない女性では、総コレステロールに対してライフスタイルの影響は認めにくいとされている(高崎1994)。また、第4次循環叫器疾患基礎調査(1993b)報告において、女性では血清総コレステロールの平均値は加齢とともに上昇する傾向が示されている。すなわち、年齢と有意な相関が認められ、重回帰分析においても標準偏回帰係数が最も大きいので、本調査でも既知の結果を支持するものである。
従来、コレステロールに関しては、栄養素、熱量の摂取状況に着目して検討されてきた。近年、血清総コレステロール値に関して、栄養素レベルではとらえられない食品固有の生理作用が明らかにされている。たとえば高繊維の食品や魚油の摂取は、血清総コレステロールを低下させること(桐山1980)、また遺伝要因や生活習慣との関連まで問われるようになっている。遺伝要因については分子生物学領域の進展に負うものであるが、生活習慣からコレステロール値との関連を究明するためには、質問票調査内容などに慎重な検討が必要であると思われる。
HDL−コレステロール値は、食事摂取による直接の影響は少ないとされている(中村1987)。吹野は(1994)はHDL−コレステロール値と単独の食品との関連は認められず、総脂肪摂取との間に弱い正の相関が認められたと報告している。本調査においては、HDL−コレステロールは地域差が大きく、洋風の食事尺度と弱い正の相関を示すのみであった。
尿酸値には性差があり、年齢、環境、性格(一般的に活動的な人に多い)、スポーツ、食事とも関連があることが知られている(佐々木ら1983)。本調査においても地域差、年齢と尿酸値の相関が有意であり、これまでの報告を支持するものであった。また、重回帰分析では自発性尺度が選択され、上記の報告同様、活動的な場合に数値が高くなる傾向が認められた。また肉・油脂、洋風の食事尺度も同様に重回帰式に選択された。食事として摂取されたプリン体は、体内で大部分尿酸に分解され、ほとんど尿中に排泄されるため、通常の食事では尿酸値への影響は少ないとされている(西田1987)。しかし、いわゆる健康人の正常範囲内の値に関しては、プリン体含有量の多い食品(肉・油脂など)や非常に少ない食品(洋風の食事など)の摂取頻度が尿酸値と何らかの関係があると考えるべきであろう。
グリコヘモグロビンを基準変数とした重回帰分析では、糖分尺度と食事の不規則尺度の影響が認められた。不規則な食事はBMI、収縮期血圧とも

 

 

 

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